2021年6月6日日曜日

結界

 まるで「縄のれん」みたいな感じで、文字の連なりが天井からいく筋も垂れ下がっているのですよ。

 高貴なお人が、御簾のむこうに鎮座ましますがごとくに、その文字の連なりでできた縄のれんの向こうに、又吉さんがいるんですよ。

 私は目を凝らして、その姿を見ようとするのだけど、文字の縄のれんが「蜜(みつ)」になっているものだから、なかなかそのお姿がはっきりと見えない。

 もどかしさを感じながらも、私は、縄のれんに近づく。

 だけど、そこには強い結界が張られていました。

 到底、その結界を切って向こう側に行くことは不可能でした。

「私達は、決して出会ってはいけない二人なのだ」
 私は何かを思い出し、自分にそう言い聞かせました。

 何がどうしたのか、はっきりとは思い出せないけれど、もうそれは輪廻転生を気が遠くなるくらい繰り返して刷り込まれた「掟(おきて)」のようなものなのでした。

 縄のれんの文字を拾い読みして、私は真意を読み解こうとしていましたが、なかなか容易なことではありません。難解な古代文字を解読するかのように、私は文字を追いました。

 その向こうに、あなたの姿が・・・。

 手を伸ばせば、届きそうなところ。

 でも決して、結界を超えてはならぬのだと、私は悟りました。

 出会うべくして出会った二人は、悟るべくして悟り、距離をこれ以上つめてはならない。

 私は涙をのんで、縄のれんから後ずさるのでした。